〒143-0016 東京都大田区大森北3丁目32-12
金銭消費貸借契約書を作成しても、お金を貸した相手(債務者)から貸したお金を確実に返してもらえる保証はありません。
そこで、万が一、債務者からの返済が滞った場合には、債務者の資産から強制的に貸したお金を回収することができる手段を講じておく必要があります。
その手段を強制執行と呼び、そのために必要な手続きが執行文付与と債務者に対する送達です。送達証明書とは債務者に対して執行文が付与された公正証書を送達したことを証明する書類のことをいいます。
強制執行は債権の取り立てのために行なわれる手続きです。しかし、公正証書によって行う事ができる強制執行手続きとできないものとに分かれています。
金銭の取り立てに関するものは公正証書による強制執行手続きができますが、たとえば土地の明け渡しといった金銭以外のものについてはできません。
ここでは、公正証書でできる強制執行について、執行文付与と送達証明書について解説していきます。
強制執行とは、債務者が期日になっても、支払いをしてくれない場合に、法律によって強制的に貸したお金を回収する手段をいいます。
具体的には、債務者の給料や所有している不動産、動産などの資産を差し押さえる手続きのことです。
また、債務者が有している債権(債務者が債権者以外の他人に対してもっている貸金の請求権)も差押えの対象となります。
強制執行を行うためには、執行文の付与された債務名義の正本と送達証明書、その他に裁判所から指示された書類を用意することが必要です。
債務名義とは、強制執行を行うことができる債権の請求権が存在することやその範囲、債権者、債務者の氏名が記載された公的な文書のことをいいます。具体的には、裁判所から出された判決文、和解調書、調停調書、さらに公正証書のことです。
これらの書類をもって、執行裁判所に対して強制執行の申立てを行います。執行裁判所とは執行手続きを行う裁判所のことを指し、差し押さえる債権の種類によって異なります。
たとえば、給料を差し押さえる場合には、債務者の住所を管轄する地方裁判所、また、不動産や動産などを差し押さえる場合には、それらの所在地を管轄する地方裁判所が、申し立てを行う執行裁判所となるのです。
執行文とは、債務者の財産に強制執行をすることができる旨の文章のことをいいます。
執行文があることによって、債権者は債務者の財産に強制執行の手続きをすることができるのです。
執行文付与とは、債務名義に執行文を付与することです。債務名義は債務の内容について記載された書類ですが、強制執行に関する文は記載されません。
そのため、債務名義だけでは執行裁判所に対して強制執行の申立てをすることはできず、別に執行文を付与する必要があるのです。
たとえば、公正証書で金銭消費貸借契約書を作成した場合には、必ず契約書の終わりに執行文を付与するようにします。公正証書による金銭消費貸借契約書に執行文が付与されていれば、債務者が貸金の返済をしない場合に裁判をせずに、強制執行手続きができるからです。
これに対して、公正証書ではない金銭消費貸借契約書を作成した場合には、貸金の返済がなされなければ、裁判を行い、債務者に対して貸金返済を命ずる確定判決をもらいます。この確定判決が債務名義となるので、それにあらためて執行文を付与し、強制執行手続きを行うこととなります。
なお、仮執行宣言付支払督促と少額訴訟判決については、執行文付与の手続きをしなくても強制執行を行うことができます。
送達証明書とは、公正証書や確定判決といった債務名義となる書類を強制執行手続きの前に、債務者に対して送付したことを執行裁判所に対して証明する書類のことです。
強制執行を行う際には、事前に債務者に債務の内容について知らせて、弁済や反論の機会を与える必要があります。
また、債務名義の事前送付は、すでに債務の弁済が済んでいるのにも関わらず、行き違いによって強制執行の申立てを行ってしまうリスクを防止するためにも必要となります。
以下では、送達証明書の交付について、公証役場で金銭消費貸借契約書を作成した場合を例にとって解説します。
公証役場で作成した債務名義となる金銭消費貸借契約書の送付には、交付送達と特別送達の2種類があります。
交付送達は、公証役場に契約の当事者(債権者と債務者、さらに連帯保証人がいる場合には、その人も含みます)が出頭して金銭消費貸借契約書を作成する場合に、債務者と連帯保証人に対してその場で交付するものです。
交付送達の場合には、送達証明書はその場で発行されることとなります。
特別送達とは、公証役場での金銭消費貸借契約書の作成を、債務者や連帯保証人ではなく代理人によって行った場合に、その場にいない債務者や連帯保証人の住所地に郵送して交付するものです。
特別送達の場合には、送達証明書の発行は債務名義が債務者のもとに到達した旨の通知を公証役場が受け取ってからなされるため、時間がかかります。また、送達証明書は債権者が契約書を作成した公証役場に出向いて受け取る必要があります。
さらに、債務者が移転をしてしまっていて、債務名義を送達した住所に住んでおらず、行き先が不明になってしまった場合には、送達ができません。
ただし、債務者が行方不明となった場合には、公示送達という手続きを行うことで、送達の効力を生じさせることができます。
公示送達とは、債務者の行方がしれない場合に裁判所によって行われる手続きのことです。この場合には、申し立ての際に債権者が債務者の住所等を調査しても所在が不明であることを証明するために、調査結果を裁判所に提出する必要があります。
特別送達には、このようなデメリットがあります。そのため、金銭消費貸借契約書を作成する場合には、交付送達を利用するほうがメリットがあるでしょう。
強制執行手続きを行うためには、債務名義に執行文を付与することと送達証明書の取得が必要です。
公正証書によって金銭消費貸借契約書を作成する場合は、それらの手続きを公証役場で済ませることができます。
その際には、契約の当事者全員が一堂に会することができれば、送達証明書を取得するために、債権者が後日、公証役場まで足を運ぶ必要がないので便利です。
当事務所では、公正証書による金銭消費貸借契約書の作成をしております。個人間での金銭消費貸借契約についてご検討されている皆様、ぜひご連絡ください。
当事務所では、面談によるご相談や業務のご依頼を頂いた場合、ご希望に応じてオンライン通話を利用した打ち合わせをさせていただいております。
もちろん、直接面談による打ち合わせ等は行っております。こちらを希望される方はお申し出ください。
なお、公証役場では対面による手続きが必要となりますので、あらかじめご承知おきください。
契約書作成メニューは次の通りです。