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自分が死んだ後、残された家族が困らないようにするために作るのが遺言状です。
特に、障がいがある子どもがいたり、パートナーとの関係が内縁であったりした場合には遺言状によって、自分の死後も対応できるようにしておく、というのがベストな方法といえるでしょう。
しかし、そのためには効果的な遺言状を作成しておくことが必要です。遺言状は作ったけれど、どこにあるのかわからなかったり、形式の不備によって無効とされたりすることがあるからです。
そこで知っておきたいのが効果的な遺言状とは何かという点。記載する内容が重要なのは当然のことです。しかしそれと同時に遺言状には、作成方法の違いによっても相続手続きの進めやすさや内容が無効とされるおそれの少なさなどに差が生じることがあります。
どの作成方法によるかで、効果があるか否かがわかれてしまうのが遺言状である、ともいえるでしょう。
ここでは、作成方法の違いによる遺言状の種類とそのメリットデメリットについて解説していきます。
遺言状には次の3種類があります。
それぞれの内容については後述しますが、その前にお伝えしたいのは遺言状は、作成をする時の状況によって方式が異なるという点です。具体的には次の通りとなります。
普通方式遺言 | 一般的な遺言状作成の方法です |
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特別方式遺言 | 遺言状を書く人が、船舶や航空機に搭乗中に事故に遭い、死亡する可能性がある場合や伝染病などで隔離されているときに作成するための遺言状です |
通常は、普通方式遺言の作成が行われています。後述する3種類の遺言状はいずれも普通方式による遺言です。この記事では普通方式である3種類の遺言状について解説します。
公証役場の公証人に対して遺言状の内容を口述し、それを基にして公証人が作成する遺言状です。
法律のプロである公証人が作成しますので、遺言状の内容のチェックだけではなく、記載方法(日付、語句の修正等)が違うことによって遺言状が無効になるおそれがありません。
また、作成した遺言状は、自分で持つ以外に公証役場で保管されますので、万が一、自宅で遺言状が紛失しても問題ありません。
さらに公正証書遺言は、他の2種類の遺言状と異なり、遺言執行の際に家庭裁判所による検認の手続きが不要です。
被相続人(遺言状を書いた人)が死亡した後、遺言状を開封するためには、家庭裁判所によって、その遺言状が、確かに被相続人のものであることを確認する作業を行う必要があります。その作業が検認と呼ばれているのです。
自筆証書遺言、秘密証書遺言ともに、遺言状開封のためには検認をしなければなりません。これに対して公正証書遺言では検認が必要ないのです。
公正証書遺言にはこのようなメリットがあります。
しかし、その一方で、作成のためには、2名以上の立会人が必要とされており、遺言状の内容を秘密にしておくことが難しいこと。また、公証人による作成となりますので、時間と費用がかかることの2点がデメリットとしてあげられます。
自分で書く遺言状です。自分で書くものですから、費用がかかりません。また、立会人の必要がないので、遺言状の内容が他人に知られることもありません。
もっとも簡便に作成できる点がメリットとなる遺言状といえます。
しかし、遺言状の本文については、すべて自筆で書く必要があるので、パソコンやワープロによる作成は認められません。
また、遺言状は、書き方の形式が決まっているため、もしも、間違えた形式の遺言状を作成してしまうと、無効とされてしまうおそれがあります。さらに、遺言状を書いた人が死亡した後、遺言状の所在が不明となる可能性もあるのです。
自筆証書遺言にはこのようなデメリットがあります。
しかし、令和1年7月に施行された改正民法では、自筆証書遺言の作成方法が次のように変わりました。
自筆証書遺言の内容はすべて自分で書く必要がありますが、相続財産の目録はパソコンで作成したものでよいとされたのです。
具体的には、財産のうち、土地建物は長男に、金融資産は長女に、といった内容は自筆で書き、相続財産の目録をパソコンで作成するというものです。また、相続財産の目録を作成するにあたっての詳細な内容については、不動産登記簿や預金通帳のコピーでもよいこととなっています。
注意しなければならないのは、パソコンで作成した財産目録には、その1枚ごとに作成した被相続人の署名捺印が必要になることです。この場合に使用する印鑑についての定めはなく、遺言状本紙とは違った印鑑を使用しても差し支えありません。
なお、遺言状本紙にパソコンで作成した財産目録を添付する際の決まりはありませんが、一体性を証明するために、法務省では、ホチキスでとじ、契印を押すことを推奨しています。
自筆証書遺言には紛失や改ざんのおそれがあります。そのため、令和2年7月10日より自筆証書遺言保管制度が運用されています。具体的には全国の法務局にある遺言書保管所で自筆証書遺言を保管することで遺言状の紛失や改ざんを防止するものです。
この制度を利用した場合には検認の手続きをする必要がなく、自筆証書遺言のデメリットの1つがなくなることとなります。
ただし、制度の利用のためには所定の形式に則った手続きと費用とが必要となるので、自筆証書遺言のメリットである簡便さがなくなるデメリットもあります。
自筆証書遺言と同じく、自分で遺言状を書きます。しかし、秘密証書遺言の場合、遺言状は手書きではなくワープロで作成したものでも認められています。(署名は自筆、さらに捺印も必要)
その後、遺言状を封筒に入れて封印。2人の立会人とともに公証役場に行き、公証人に遺言状の存在を認証してもらう遺言状です。この時には、公証人は遺言状の内容のチェックはしません。単に持ち込まれた遺言状があることの認証をするだけです。
そのため、遺言状の内容が他人に知られることはありません。
しかし、交渉人による遺言状のチェックがないので、記載方式の間違いによって遺言状が無効となるおそれがあります。また、公証役場に対して認証のための費用がかかります。さらに自筆証書遺言のような保管制度がないので、遺言状を紛失するおそれもあります。この3点が秘密証書遺言のデメリットです。
遺言状は効果のあるものでなければならないのは当然のことです。しかし、遺言状の種類によっては効果に差がでてしまう可能性があります。
もっとも安心できるのは公正証書遺言ですが、費用がかかります。
自筆証書遺言は費用はかかりませんが、内容や形式という点で不安が残るかもしれません。費用のかかる秘密証書遺言についても自筆証書遺言と同様の不安があります。
いずれを選ぶのかは遺言状を書く方の判断によりますが、悩んだときには当事務所にご相談ください。当事務所では遺言状作成のサポートをさせて頂いております。
電話やメールによる相談は初回無料です。
なお、ご希望に応じてオンラインによる相談も受け付けております。(有料)
相続業務のメニューは次の通りです。