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突然、親が亡くなり相続の手続きをしなければならなくなった。しかし、何から始めたらよいのかわからない。このような思いをされた方は多いのではないでしょうか。
相続手続きは面倒で時間がかかるうえに、手続きによっては期限が決められているものもあります。そのため、気ばかり焦って肝心の手続きが前に進まないことがあるかもしれません。
そこで、ここでは相続手続きの順序と注意点について解説します。
相続手続きは次の順序で行われるのが一般的です。
まず、亡くなられた方(被相続人)が遺言状を残しているか否かを確認します。遺言状があれば、相続財産については、その内容に沿った形で分けることとなります。また、相続財産の内容についても遺言状に記載されていますので、あらためて調べる労力が軽減されます。
遺言状は被相続人の最後の意思を表した文書であり、相続にあたってはもっとも優先されます。そのため、遺言状の存在を知らないで遺産分割協議を行った場合、状況によっては再度、遺産分割協議を行わなければならないことがあるのです。
この点で注意が必要です。
相続財産の調査は、後述する相続放棄に関係するため慎重に行う必要があります。相続財産には借金も含まれるからです。被相続人のもつ不動産や金融資産などの財産よりも借金のほうが多い場合、相続人がその借金を返さなければなりません。
相続財産には不動産、預貯金、株式や投資信託などがあります。不動産については登記識別情報や固定資産税の課税通知書によって調べることができます。また、預貯金や株式といった金融資産は取引案内書やキャッシュカード、さらには株券などを探すことが必要です。
注意しなければならないのは、被相続人がオンラインによる金融取引を行っていた場合です。この場合、すべての取引がネット上で完結してしまうため、取引の存在自体がわからないことがあるのです。その場合は証券保管振替機構(略称:ほふり)で調べることができます。
相続手続きを行うためには相続人を特定しなければなりません。遺産分割協議を行う場合には、相続人全員の承諾が必要となります。また、遺言状による相続手続きを行う際には、相続人全員に遺言状があることを周知しなければなりません。そのため、相続人の調査を行う必要があるのです。
相続人の調査は故人の出生から死亡までの戸籍謄本を取りよせることで行います。
相続財産の内容によっては、相続人は相続の放棄を行うのか否かを判断する必要に迫られる可能性があります。前述の通り、相続財産には借金も含まれます。もしも借金が高額で相続財産よりも多いときには、残った借金は相続人が返済しなければなりません。その場合に利用できるのが相続放棄の手続きです。相続放棄を行うことで相続人は借金の返済を行わなくともよくなるからです。
ただし、相続放棄の手続きを行うことができるのは相続が開始されたことを知ったときから3ヵ月間と決められています。この期間を過ぎてしまうと相続放棄が認められないのです。そのため、相続財産の特定はなるべく早く行い、相続放棄の有無について検討されるのがよいでしょう。
なお、この3ヵ月という期間については、事情によっては延長が認められることがあります。たとえば、3ヵ月を過ぎた後になって借金があることに気がついた場合などがそれにあたります。しかし、延長は家庭裁判所の判断によることとされており、今、申し上げたたとえ話のようなことがあった場合でも確実に延長が認められるわけではありません。
相続財産が確定し、相続人の特定が終わった段階で遺産分割協議書の作成を行います。遺産分割協議書には相続財産の目録と相続人のうち、誰がどの財産を相続するのかを記載します。そのうえで、相続人全員が署名捺印を行い完成させます。
なお、遺産分割協議書を作成する際には相続人全員が一つ所に集まる必要はありません。郵送によって各人が署名捺印をしたものであっても問題ないのです。相続人が遠方にいる場合など、郵送によることが多いようです。
銀行には遺言状もしくは遺産分割協議書のほかに被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式を提出して手続きを行います。このうち、戸籍謄本については法定相続情報一覧図を提出することで換えることができます。
出生から死亡までの戸籍謄本一式を手続きのたびに銀行に提出するのは手続きに時間がかかります。銀行は戸籍謄本一式を確認したうえで返却するのですが、その間、他の銀行への手続きはストップせざるをえません。そのため、故人と全相続人との関係を図によって示した法定相続情報一覧図を提出することで手続きの簡素化を図ることが行われているのです。
法定相続一覧図は法務局で交付される書類です。交付される枚数には制限がないので手続きを行う銀行の数だけ交付を受けて手続きを進めることができます。
なお、ここでは銀行を例として解説しましたが、証券会社、日本年金機構などへの手続きも同じとなります。
遺産分割協議や遺言状によって不動産の所有者が決まった場合には、その不動産の名義変更手続きを行う必要があります。
名義変更手続きを行わなければならない期限はありません。しかし、手続きを行わないでいるうちに、他の相続人がなくなり、新たに相続手続きを行う必要が起きたときには当該不動産の権利関係が複雑になる可能性があります。
不動産の名義が故人のままの場合、その不動産は相続人全員が共有しているものとみなされます。そのため、遺産分割協議で不動産所有の権利を有した相続人であっても、名義変更手続きを行わなければ、その権利を他に主張することができないのです。
たとえば、兄弟間で遺産分割協議が行い、不動産を兄が相続したとしましょう。兄が不動産の名義変更手続きを行わないでいる間に弟が亡くなり、その子供が新たに相続人となった場合には、その不動産については再度遺産分割協議を行う必要がでてくるのです。新たに相続人となった方が必ずしも協力的ではない場合、遺産分割協議が難しくなる可能性があります。
そのため、遺産分割協議が終了した時点ですみやかに不動産の名義変更手続きを行うことが必要となるのです。
相続税の申告手続きは、被相続人が亡くなったことを知ってから10ヵ月以内に行うものとされています。遺産分割協議が終わっていなくても申告手続きは行なわなければなりません。この場合には、相続人のもつ法定相続分もしくは包括遺贈の割合にしたがって相続税の計算を行い、申告手続きをすることとされています。
申告手続きが終わった後で遺産分割協議が行われ、その結果として各相続人が納める相続税の金額が当初のものと違った場合には、修正申告を行います。
ただし、相続税には次の算式による基礎控除が認められています。相続財産が基礎控除の範囲内であれば、相続税はかかりません。
基礎控除額=相続財産の総額-3,000万円+(法定相続人の数×600万円)
相続手続きの順序と注意点について解説いたしました。重要なのは相続財産と相続人の調査です。特に相続財産については相続放棄との関連で注意することが必要となります。
当事務所では、不動産の名義変更と相続税の申告を除いた他の手続きについて次の業務を行っております。
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相続業務のメニューは次の通りです。